海水から淡水を作り出すそして・・・ 海水淡水化装置 海水淡水化技術の研究、開発、および普及は、私たちの未来に向けた重要な一歩です。また、この装置最大の特徴は、副産物としてマグネシウムを海水から抽出することが出来、無限の資源がとても重要な資源に生まれ変わるのを促進させる効果につながります。 海水淡水化プラントの建設ラッシュ 現在、地球規模で進行する水不足問題は、私たちの未来を脅かす深刻な課題の一つです。地球上の水の97%は海水であり、飲料水や農業、工業用途に使える淡水はわずか3%に過ぎません。それにもかかわらず、人口増加や気候変動による干ばつの影響で、淡水資源の確保が困難になっています。特に中東や北アフリカ、南アジアといった乾燥地域では、すでに深刻な水不足が日常の一部となっています。このような危機的状況を受け、各国では海水淡水化プラントの建設が急速に進んでいます。海水淡水化技術は、膨大な量の海水を利用して飲み水を生み出す画期的な方法であり、水不足の解決策として注目されています。中でも、逆浸透(RO)膜技術を利用した装置は、効率的かつ持続可能な方法として広く採用されています。例えば、サウジアラビアでは、世界最大規模の海水淡水化施設を建設し、年間数十億リットルもの飲み水を生産しています。 この施設では、太陽光エネルギーを活用して稼働しており、環境負荷を抑えながら地域の水需要を支えています。一方、オーストラリアでは、気候変動による干ばつ対策として複数の海水淡水化プラントが稼働しており、都市部の水供給を安定させています。さらに、イスラエルは淡水化技術のリーダー的存在として、飲料水の約70%を海水淡水化で賄うまでに至りました。これらの取り組みは、海水を淡水化する技術が、もはや未来の夢ではなく、現実的な解決策として確立されつつあることを示しています。同時に、海水淡水化は単に水を供給するだけでなく、農業や工業の発展を支え、人々の生活の質を向上させる鍵ともなっています。しかし、この技術には課題もあります。高コストやエネルギー消費、そして排水による環境影響といった問題が未解決のまま残っています。それでも、技術革新や再生可能エネルギーの利用によって、より持続可能で経済的な海水淡水化の実現が進んでいます。 エジプトの海水淡水化事業 エジプト国内には約90か所の海水淡水化プラントが稼働していると推定されます。例えば、2020年にはAbdul Latif Jameel Energyがエジプト各地に58基の海水淡水化プラントを所有し、合計で日量82,440㎥の飲料水を供給していました。 また、2017年には5県に16基の淡水化プラントを新たに建設され、これらのプラントの合計造水能力は日量47万3,000㎥と報告されています。エジプト政府は、2025年までに日量335万立方メートル、2050年までに日量885万㎥の造水能力を目指しています。 エジプト国内の海水淡水化プラント数 約 0 箇所 1日の淡水生産量 0 万㎥ 淡水化の過程での問題点『ブライン』 ブラインとは? 海水を淡水化した際に残る高濃度の塩水の事で、そのまま海に排出する方法が現在とられており、それが原因で海洋生物に悪い影響が出始めています。335万立方メートル/日の淡水を生産する場合、同程度のブラインが排出されると推定されます。ただし、各プラントの技術や運用条件により、実際の排出量は異なる可能性があります。 過剰な塩分 → 沿岸水域の海水温度上昇→ 酸欠海域(デッドゾーン)形成→ 酸素濃度の低下 → 海洋生物が死滅→ 自然破壊の進行 ブライン問題の解決案 1. 環境影響評価(EIA)の実施 適切な放出地点や方法を決定するためブラインの放出に先立ち、環境や海洋生態系への影響がどの程度出るかを調査します。 2. 放出方法の工夫 ブラインの直接放出は、海洋生物に悪影響を及ぼす可能性があるため、ブラインを海水と迅速に混合・希釈するための装置で高塩分濃度が極地的になるのを避ける。深海放出:海洋の深層部にブラインを放出することで、表層の生態系への影響を軽減。 3. 放出地点の選定 海岸からの距離などの規定は地域によりますが以下のような選定基準があります。海流の状況:ブラインが速やかに拡散・希釈されるよう、海流の強い地点を選定。生態系の敏感度:サンゴ礁や漁場など、敏感な生態系から距離を置く。 4.ブラインを再利用し再生エネルギーを創り出す新たな取り組み ブラインには主に塩化ナトリウム(NaCl)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)などのミネラルが高濃度で含まれています。これらの成分を有効活用するための研究が進められています。これらを抽出したブラインは自然環境やさしく安心して排出可能になっています。 SMILE LAB.のブラインに対する展望 海水を淡水化する上で排出される高濃度塩水(ブライン)からマグネシウムや塩化ナトリウムを生成することで、多くの事業への使用が可能となり、無限の資源サイクルが生まれます。 土を掘り返し、二酸化炭素を排出しながら工業革新を推し進める過去の流れから徐々に環境を守る技術革新へと進む現在において、大きな飛躍となる事業であると考えています。 7つのポイント Point 1 水資源の持続可能な供給 海水は地球上の水の97%を占めていますが、飲料水や農業に利用できる淡水は限られています。海水を淡水に変える装置は、水資源を有効に活用し、持続可能な水供給を確保する手段としてとても重要な役割を担います。 Point 2 飲料水確保や質の向上 海水淡水化技術を利用することで、水不足地域の人々に安全で飲料水を提供できます。これにより、水関連の健康問題や疾病のリスクを減少させ、生活の質を向上させることができます。 Point 3 農業の生産性向上 淡水供給の確保は農業においても大きな役割を果たします。海水淡水化技術は、干ばつの影響を軽減し、農業生産性を向上させ、食糧安全保障に寄与します。 Point 4 環境保護 海水淡水化プロセスが進化するにつれ、よりエネルギー効率の高い方法が開発されています。これにより、環境への負荷を減少させ、海洋生態系への悪影響を軽減できます。 Point 5 緊急事態時の供給 自然災害や緊急事態時には、大量の淡水供給が急務となることがあります。海水淡水化技術は、緊急時に素早く水を供給する手段として非常に重要な役割を担います。 Point 6 経済の発展 淡水供給の向上は、新たな産業やビジネスの発展にも寄与します。海水淡水化技術の導入により、雇用機会が増加し、地域経済が活性化する可能性があります。 Point 7 マグネシウム循環社会の形成 海水を淡水化する過程で海水からマグネシウムを抽出。そのマグネシウムを利用することで、世界中の国が、エネルギー、水、食料の自給自足を実現させる 2006年に矢部東京工業大学名誉教授はマグネシウム循環社会の実験を世界的に権威のある学術誌に発表。 2009 年にはタイム誌が選んだ環境のヒーローの 科学者・発明者部門のトップに選出されました。その後、タイム誌、 CNN 、フォーチュン誌、サイエンス誌が協賛するワールドテクノロジーアワードのファイナリストに選出され、現在フェローとなっています。 2023年11月には、放射能物質のトリチウムを水から分離する新たな方法を綴った論文が、日本原子力学会の欧文誌に掲載されることが決定しました。 海水の採取は容易です 矢部 孝 受賞歴 1987年 レーザー学会研究進歩賞1990年 手島記念研究賞1997年 日経サイエンスコンピュータ・ビジュアリゼーション・コンテスト佳作1999年 王立研究所200周年記念講演2002年 情報処理学会ベストオーサー賞2003年 プラズマ核融合学会研究論文賞2004年 日本機械学会計算力学部門功績賞2004年 流体科学賞2006年 国際数値流体力学会名誉フェロー2007年 APACM(計算工学アジア太平洋連合) Award for Computational Mechanics(APACM )2009年 タイム誌環境のヒーロー2010年 IACM(国際計算工学連合) Award for Computationnal Mechanics マグネシウムを永続的に確保、利用できる世界へ Y式-海水淡水化装置の革新的な技術により、海水からマグネシウムを抽出し、マグネシウム循環社会の実現への取り組みは、永続的な社会の循環する未来の構築において非常に重要なものです。マグネシウムは産業、エネルギー、環境のさまざまな側面で鍵となる要素であり、その供給を容易に可能にする今回の装置は非常に重要な存在となります。矢部孝先生の技術は、従来のマグネシウム採掘方法に比べて環境に対する負荷を軽減し、豊富な資源である海水を利用することで、持続可能性の原則に基づいています。この技術によって、我々はマグネシウムの供給を安定化することが出来、同時に地球環境を保護し、温暖化などの環境課題にも貢献することができます。マグネシウム循環社会の実現は、エネルギー効率、軽量化技術、再生可能エネルギーの発展など、さまざまな分野にポジティブな影響を及ぼします。この功績は、私たちの地球と次世代への貴重な技術革新となります。 ごあいさつ 私は海水淡水化装置の開発者として、持続可能な未来を築くための技術革新に貢献しています。私の研究と開発により、海水を貴重な淡水資源に変えることができ、世界中の水不足問題に対処する一環となっています。私の使命は、地球上の人々に清潔な飲料水を提供し、環境への負荷を軽減することです。海水淡水化装置の革新的なテクノロジーを通じて、私は未来の世代により持続可能な生活を提供するために努力しています。